『企業としての国家: 政治的発展における経済的な効力』. By Richard D. Auster and Morris Silver
Richard D. Auster and Morris Silver (1979) *The State as a Firm: Economic Forces in Political Development*, Studies in Public Choice, no. 30. Boston: Martinus Nijhoff Publishing,
Therefore, “sclerotic” is probably a better word for the “stability” of the Structure. Sclerotic systems follow the pattern of life: they work until they fail completely, constantly experiencing unidirectional changes. Such is the lifecycle of cars, cats, stars, and Soviet Socialist Republics. There appears to be some principle of institutional entropy at work, common to large, complex, long-lived systems.
↑のように、Auster &Silver のinstitutional entropy という言い方自体ヤーヴィンも似たような意味で一度使ったことがあるけどたぶん偶然
Indeed it is quite reasonable to describe coherent (or, in democratic parlance, “absolute”) authority as orderly, and divergent (or, in democratic parlance, “plural,” “open,” “inclusive,” etc.) authority as disorderly. The trend from coherent to divergent is thus a case of entropy.
ヤーヴィンは political entropy という言い方も使ってる:
First, we need to define left and right. In my opinion, obviously a controversial one, the explanation for this mysterious asymmetric dimension is easy: it is political entropy. Right represents peace, order and security; left represents war, anarchy and crime.
注目点
民主主義はそのコスト(以下)にも関わらず、それ自体として需要される高価な消費財であり、特に役に立つわけではない
政治参加が楽しいのでやってるだけ??
ディズニーランドに行くことがなにかの役に立つわけではない消費財であるように、楽しいので投票してる的な
経済成長と民主化が相関するのは、その費用を払えるだけの経済があるときのみ民主化するから
ディズニーランドに行く人が多い国は豊かだが、ディズニーランドは経済成長の原因ではない
民主主義には制度的エントロピーの問題がある
国家は独占事業なのでよくない
ソ連はスターリン時代のほうが独裁的で良かった、その後権力が分散して荒廃したのかもしれない
制度的エントロピーや独占の問題を解決するためのいくつかの創造的な提案
付録として制度的エントロピー概念の形式的解説と、革命・反乱の数理モデルがある
でも罰金と違って余剰が他の人に行くわけではないから、外部性の内部化として捉えた場合には監禁というのは総余剰の観点からするとよくなさそうだね。
2. Private property, as an institution, did not owe its origin to any of those considerations of utility, which plead for the maintenance of it when established. Enough is known of rude ages, both from history and from analogous states of society in our own time, to show that tribunals (which always precede laws) were originally established, not to determine rights, but to repress violence and terminate quarrels. With this object chiefly in view, they naturally enough gave legal effect to first occupancy, by treating as the aggressor the person who first commenced violence, by turning, or attempting to turn, another out of possession. The preservation of the peace, which was the original object of civil government, was thus attained: while by confirming, to those who already possessed it, even what was not the fruit of personal exertion, a guarantee was incidentally given to them and others that they would be protected in what was so.
Gerhald E. Lenski *Power and Privilege: A Theory of Social Stratification*
"proprietary theory of the agrarian state"
p.24 マルクスの階級国家論について; 金持ちのほうが守ってもらうものが多いので国の顧客であるとも言えるが、それは金持ちがヨットやキャビアの顧客であるというのと変わらない
著者はMosca & Dahrendorfの考えに近い
また、
Olson,
Breton,
D.Friedman
North and Thomas
も似た考え。
政府の被雇用者を監視するコストの増大が及ぼす影響はテクノロジーによる国家拡大コストの低下より遅いので、我々は巨大で非効率な国家に統治されることになる
制度的エントロピー(institutional entropy): デパートストアでデパートに並べるものを買う役割の従業員は、性的に魅力のあるセールスパーソンや都合の良いセールスパーソンなどから買ったものを並べることで(仮にそれが売れない商品であったとしても)個人的な利益をえる
従業員にとって企業全体の利潤は公共財であり、十分には提供されないと予想できる。
しかし残余所得受領者は、そのようなセクシーなセールスパーソンから購入するような行為を止める個人的インセンティブをもつ。少なくともコストを減らすインセンティブがある。
民主主義においては、残余所得受領者は存在しないため、被雇用者が組織を犠牲に個人としての利益を追求すること(shirking)を監視する意欲のある人が居ない。(p.75)
残余請求権って、協力から生じる社会的余剰を受け取る人とみなせる?
そうかな。株主以外にも消費者余剰とかあるし、生産者余剰が全部株主に入るわけじゃないよね。
企業間の競争が存在しなければそうなるかもしれない
フリーライド
shirking : 横領、賄賂、教師が生徒を盗撮するなど。
ayu-mushi.icon賄賂はもし株主に還元されるなら何の問題もない
制度的エントロピーはなぜ徐々に増える? 組織の人事や財政自体が制度的エントロピーに服するため?
増大する傾向がある、という点から「エントロピー」という言葉を使ってるのかな
プリンシパル・エージェンシー問題
王に比べ政治家の任期が短いため短期的思考になるが、多くの市民が政治家個人でなく党に投票する傾向によって相殺される(p.75)
民主主義国家においてお金で利益を得ることを禁じられているため、軍事的遠征や道徳や好みの押し付けなどで楽しみの形で利益を得るインセンティブの増大 p.78
in cash vs. in kind
psychic income
精神的課税と言ってもいいかもしれない
フリンジ・ベネフィット
フランスの革命後の国民議会の軍は効率的だったが、これも制度的エントロピーによって説明できる。
制度的エントロピーはあらゆる組織が持つ徐々にdeorganizationする傾向である。
フランス軍は新しかったから効率的だったのだ。(p.76)
共産主義が荒廃したのは (独裁的だったからではなく) 実は (スターリンより後には) より広いグループに権力を配分することに成功したからかもしれない(p.76)
著者は30年代にはソ連は良かった(今は悪いが)という西側の報告があると言っている
この本は1979年に書かれておりまだソ連は崩壊してない。
当時ソ連に招かれていたバーナード・ショウやH・G・ウェルズ、ニューヨーク・タイムズ記者のウォルター・デュランティ(Walter Duranty)等は、「模範的な運営が成されている農村」を見せられ、当局の望み通りの視察報告を行っただけであった。
…
結局、ソ連政府が一連の飢餓の事実を認めるのは、1980年代まで待たなければならなかった。
というわけなので、もしかするとこのときには西側には30年代のソ連の美化された印象しか伝わっていない??
オーウェルが1948年に『1984年』を書いたわけだからそれはないか
民主主義では、権力の分散により、(独占企業の分析を用いると)逆向き曲がりの供給曲線により、需要が高くなると数量が減るということが起こる
税の払い戻しがあるわけではないので、国民は残余所得受領者ではない p.85
じゃあ税を取った後で使わなかった残りを国民みんなに配る ! ! とすれば、国民が残余請求者ということになるの?
それは、使わない分はそもそも税として取らずに、減税するというのと違いがあるのか
警察は法律を増やすインセティブがある p.87
警察官になることで最も利益を得られるのは犯罪者
人事の欠如による逆選択問題により、犯罪をしたい人が警官になる!
目覚めて啓発された市民なしには、警察は犯罪者とフーリガンだけになる (p.88)
逆選択問題 (フリーライドが上手い人が公務員になろうとする) は、ハンス・ハーマン・ホップの「民主主義における競争はgoods(財)の供給のための競争ではなくbadsを供給するための競争であり、自由市場における競争とは異なり良い結果にはならない」「権力を追求したいやばいやつの方が政治家を目指そうとするため、くじ引きより悪い結果になる」というののより具体的な表現になっている?
公務員の給料を上げれば、職権を乱用したいやばいやつではなくただお金がほしいだけの人が公務員になるからいい (教師の給料が低いと児童性愛者と熱血異常者だけが教師になるので給料を上げたほうがいいのと同じ理屈) という議論もできそう?
これは職権を乱用すると解雇されるという前提がないと成り立たない。給料が高ければ解雇されたときのダメージも大きいので、怪しいことをするインセンティブが小さい。
軍で前線に立たない人が多いのは、戦いたくない人が多く、そういった人を目的を達成させるために人事が制御することができないのに加え、無駄に前線に立たない人を増やすことで負傷に伴うパブリックイメージの悪さを(相対的に)無くすためかもしれない(脚注 p.164)
G. Tullock "The Transitional Gains Trap"
二大政党制は複占
ayu-mushi.icon二者繰り返しゲームだから協力/カルテル化の余地がある
第7章
民主主義と国民所得の関係には色々な説明がある
Lipset: 経済成長によって中間層が大きくなることで穏健で民主的な勢力が利益を得て、過激派は損するため
政治参加しても自分の票が影響する可能性は低いのに参加するのは、政治参加の感覚それ自体を欲求しているからだろう p.94
政党・憲法の作成、選挙の実施、少数派の権利保護、政府行動の情報開示などはコストが高く付く。
著者の結論は、民主主義は特に何かの役に立つわけではなしコストも大きいが民主主義であることそれ自体に価値が求められる消費財であるというものだ。
第8章
実験的処方
1. エントロピー問題への直接的対処
人口からランダムに立法者を選ぶことで逆選択問題(と政治的キャンペーンのコスト)を回避
任期もランダム
公務員の身分保障を下げる
「現在のシステムで公務員の身分保障を与える理由はスポイルズシステムを避けるという古い欲求によるものと見える。しかし、そもそも、スポイルズシステムを避けることは本当に社会的に望ましいことなのか?」 p.100
スポイルズシステムは支持する人を公務員にするだけではなく、支持しない公務員を解雇するというのも含むの?
公務員の昇進や給料をテストの成績でやるのではなく、個々の公務員や省庁に対しそのパフォーマンスと給料/予算が一致するようにする (パフォーマンスの測定には当時開発が進んでいた快楽主義的指数を利用する)
省庁のパフォーマンスを計測して(来年の)予算/収入を割り当てる式にした場合、その省の長官を残余所得受領者とする
長官の収入は省の全ての人員に人件費を払った支払った残りとなる
この方法は著者により病院に利用しようという提案がなされている
パフォーマンス指数の抜け道をついて利益をえられないように定期的に更新されなければならない(誰が更新するのかという問題が出てくる)
ただし長官はこの場合株主と経営者の役割を兼ねる存在になってしまうのでその収入はリスクの影響を強く受ける
軍の場合、軍事的目的の達成の有無により予算/収入を割り当てることが考えられる
//パフォーマンスはその省庁と独立した機関が測定しないとダメだろう
2. 地方分権
政府の、競争の欠如という問題への対処
二大政党は複占だから党はカルテル化して国民を搾取できるって言ってる
ayu-mushi.iconけど、ベルトラン競争を考えると、ベルトランのパラドックスで競争が働くような気もする。ベルトラン・モデルでは住み分けで競争を避けることができるけど、政党間の競争で住み分けってできなくない? 州は連邦政府による法を無効にできるようにする、また州を脱退して新しい州を作れるようにする
「補償選挙」により、脱退や無効化、それへの反対に対し何ドルなら支払っても良いかを有権者が示す
多い方が選挙に勝つ
選挙後、それにより(個人個人が)実際に敗者に金銭で補償を行う
3. 憲法による政府の制限/直接民主制
公共選択論で開発されてきた、敗者が補償され、わざと補償されるために負けるインセンティブとかがないような、"incentive-compatible mechanism"を使った金銭で投票する直接民主制
直接民主制というか、直接金権政治?
上の地方分権の仕組みと同じ
貨幣投票
vote with money and foot!
//移民によって損する人に補償される仕組みみたいなのいいかも
//お金で投票だと不平等が問題になるという懸念がもし重要ならば、投票にだけ使えるクーポンみたいなやつを配っておくというのもありかも
いやそれだと補償もクーポンになってしまう
付録B
付録として、革命に参加するかの合理的エージェント仮定に基づく理論がある (ゴードン・タロックのモデル)
$ G_r = R_i \times L_v - P_i (1-L_v) - L_w \times I_r + E - V
$ G_r (中立であるのではなく)革命に参加することから得る差し引きの利益
$ R_i 成功した場合に革命に参加したことによる私的な利益
(自分が参加したから得た利益のみが入る)
$ L_v主体が中立であった場合の革命が成功する確率
$ P_i 失敗した場合に革命に参加したことによる個人的なペナルティ
$ L_w革命の最中に被る害の確率(成功失敗に関わらない)
$ I_r革命の最中に被る害の数
$ E 参加による精神的収益
$ V参加者の時間などのリソース
なぜ成功した場合のときだけつく精神的収益というのはないのか
自分が参加することによる成功率の変化は考えていないのか(人数が多い場合だろう)
状況が良くなっている時に(上からの改革が進んでいる時などに)革命が頻繁に起こるというパラドックスがある
Revolution of rising expectation
その説明として、著者は、革命の期待コストを下げる、勝利の確率を上げる、失敗した場合の自分へのペナルティ・革命運動中の負傷の可能性・負傷の大きさを下げるなどの理由を提示している:
なぜならば、議会の議席や、メディアでの取り上げ、金銭的支援者の取り付けなどができやすくなる。(勝利の可能性$ L_vが上がる)
そして、不完全情報のために、合理的に、上からの改革を行う理由を体制の弱さや、譲歩したがっているなどに求めること (勝利の観測上の可能性$ L_vが上がり、負傷、刑罰の観測上の可能性は減る。)
Revolution of rising expectation は E を上げることによってシェリングポイントが移動するという説明もあるのでは
//上からの改革以外で状況が良くなっている時に革命するのもあるのではないかと思うが、なぜか。
//革命にリソースを投入するのはマーガリンに対するバターのような贅沢品であって、所得が上がると革命リソースに注ぎ込むのかな。いや先進国の方が革命少ないしそんなことはないか
革命後の政府は、弱いとみなされているので(つまり新たな革命をされた場合の敗北確率が高い)、反対派を厳しく罰する($ I_rや$ P_iを上げる)ことでしかさらなる転覆を抑止できない(ゆえにロベスピエールは恐怖政治をした)
弱い政府は専制的になる
→この事実を潜在的な反乱者が知っているという状況では、反対者を厳しく罰するという状況から$ R_iの高さを推論するため、どんどん$ I_r, $ P_iが上がっていくのではないか (正のフィードバック)。
戦争での敗北は革命の確率を上げる。なぜなら 戦争で疲弊している+ 思ったより強くない(張子の虎)から倒せそうとなる
革命が同時多発的に起こる(1848)のも同じ理由か。
But even that model is too simplistic. A situation in which everyone knows everyone hates Stalin is not sufficient to overthrow Stalin; if I know everyone hates Stalin, I may still suspect that no one else knows this, and so everyone else might comply with Stalin's orders out of fear, presumably including Stalin's order to kill me if I recommend overthrowing him. What we really need is a model in which everyone knows everyone hates Stalin and everyone knows everyone knows (...) everyone hates Stalin, where the (...) represents n repetitions of "everyone knows" - I'm not entirely sure whether n equals the population of the country or infinity.
第三世界の教育を受けた人がマルクス主義やナショナリストの革命に参加したがるのは、教育を受けた人こそ国有化された産業や拡大された官僚制度を経営するから p.124
産業化された社会では教育を受けた人は革命に参加するよりも就職することによる利益の方が大きいため革命しない
// それは現地のインテリがマルクス主義/ナショナリズムを支持する理由ではあるが、外国のインテリが支持する理由は謎である
// 支持しても外国なら逮捕されたりするリスクを負わずに済むからか
付録3 制度的エントロピー
"Property Rights in Bureaucracies and Bureaucratic Efficiency"
自分の関与がどちらの政策が選ばれるかへ影響する値が無視できる量である場合、(政策による結果ではなく)その政策に向けて努力・関与したことそのものによって得られる利益を最大化するように関与の選択がなされる
(影響が無視できる量でない場合にも、公共財と私的財の区別は残る)
//しかし投票では、関与したことそのものに報酬を与えることは秘密投票の原則によって禁じられている――ゆえにそもそも投票しないことが予想されるだろう
投票以外の、議会や行政組織では、秘密投票ではないので関与したことそのものに報酬を与えるような仕組みによって政策が方向付けられていくこともある、ということだろうか。
自分が影響しない場合:
関与・成果報酬型 (成功確率が問題になる、勝ち馬に乗れ)
関与・無成果報酬型 (関与する)
無関与・成果報酬のみ (自分が投票しなくても成功に影響しないなら関係ない)
組織全体としてミスを減らすことは公共財なので時間を経ても改善しない、むしろ個人がミスをすることから利益を取るのが上手くなってミスがどんどん増える
ミスから利益を得る人を防ぐ良い方法はその利益を補償した上でやめさせること
なぜならやめさせることでパイが増えるなら、補償することが可能なだけの富が生じると予想できるから
合理的経済人モデルの経済学者は自由貿易を唱えるなど、合理的経済人モデルから効率的となるように提案を行ってきたが、そのような提案が実際の政治的決定にとって結果をもたらすとは限らないことが合理的経済人モデルじたいから分かった。
合理的経済人モデルを持つ(良い政策の内容を考えるために)だけでなく、(良い政策を実現する手段を考えるうえで)使うことで実際に政策に影響を持つことができるだろう。
ICBMs(大陸間弾道ミサイル)の話が何回か出てくるのは時代のせいか
中国は広大な大陸国家であるので、飛び地の領土経営・管理防衛は本国からでは非常に難しかったのである。
脚注
38. Page 310. "A cardinal principle of Confucianism, "the man on throne should be worthy and any worthy man is eligible for the throne, " encourages ambitious men to believe they can do better job than the current rulers(Houn, p.43). No wonder the present communist rulers of China are reported to consider Confucianism subversive.
(p.160)
儒教は革命的イデオロギー
たぶんこの文献はpolitical entropy でググって見つけた。